自慢………したくなるほど素敵な男の人だけど…。
「どうしよう…。大ちゃん取られる…。」
「大丈夫だって。なんだかんだ昔から大輝先輩は美鈴が中心って感じだし。」
「なんだかんだ…って……」
頭を抱えながら教室で悩む私に付き添ってくれるのは、小中と同じ学校で仲良しの葵(あおい)ちゃん。
高校でも同じクラスになれた。
もう私は葵ちゃんと運命の赤い糸で結ばれてるんじゃないか、なんていうおかしな思考が脳内に浮かんだ。
「大ちゃんにとって私は妹みたいなものだと思うし…。もしかしたら既に好きな人いるかもしれない。」
「同じ高校生になったんだし、少しは見る目変わるかもよ?」
「んー…そうかなぁ?」
「そもそも美鈴ってさ、攻めてるようで攻めきれてないよね」
私は『どういうこと?』と書いたような表情で葵ちゃんを見つめる。
「任せて!雑誌の知識を全部投入して、大輝先輩をドキドキさせよう!」
「どきどき…。」
大ちゃんが、私にドキドキ…?
脳内の片隅で想像する。顔を真っ赤にして、伏し目がちに照れる大ちゃん。
『美鈴…。ドキドキしてやばい…。』
イイ!ものすごくイイ!
「私、頑張る!」
「そうこなくっちゃ! 名付けて!」
「『大ちゃんを射止めろ!ドキドキ大作戦!』」
コクコクと頷いて、私は葵ちゃんのことを輝いた瞳で直視した。
「……アホらしい作戦名だな?」
恐る恐る声が聞こえてきた後ろを振り返ると、小中と同じだった腐れ縁、『真島 智樹(まじま ともき)』と目があった。
嫌なやつに聞かれた…。
幼い頃、散々私に意地悪してきた智樹は未だに私の天敵だ。
「…盗み聞きするなんて趣味が悪いですねー」
「教室で話してる方が悪い。」
相入れない相手とは、まさにコイツのことであろう。
「だいたい、長いこと好きなのに妹として接されるって…どう考えても脈なしだろ。歳だって離れてるし。」
「離れてないもん。たったの2個差」
「この歳の2個差なんて離れてる内に入るっつーの。」
「そうやって智樹はいつも私の可能性潰しにかかってくる…」
呆れた私は助けを求めるように葵ちゃんを見つめるけれど、葵ちゃんはニヤニヤしたまま視線を動かしていた。
何を考えているのか全くわからなかった。ただただため息をついて、一言。
「……智樹のあほんだら…」
二度と口を聞いてやるか。なんて毎回思うけれど、毎日のように会話をしてしまう私。
私と智樹は良縁なんかじゃない。
間違いなく腐れ縁だ。