放課後。
(今日は厄日か何かか…?)
と思うくらいに運が悪い。
「あ!智樹も帰りー?」
「おぅ…」
偶然、本当にたまたま下駄箱の前で美鈴と鉢合わせた。
付き合い始めたっていう報告を朝に受けて、昼休みには葵から謎のカマをかけられた。おまけに人気の少ない放課後、下駄箱前で失恋相手と遭遇。
放課後くらい、一人になりたかった。
(これは何の試練だ…?)
きっと、中学生の時に素直になれなくて、勇気出して告白してきてくれた子の気持ちに向き合わなかったから、バチが当たったんだ。
「美鈴、一人なの?」
「うん。早く帰ってスーパーに行かなきゃでさ。ぼっち帰宅しようとしてたら偶然、トボトボ歩いてる智樹を見つけて今に至る!」
「トボトボって……なんか哀愁漂ってるみたいじゃん」
「……違うの?」
そうだった。美鈴はいつもいつも鈍感に見えるのに…。
「今日の智樹、なんか元気なかった気がしたから。」
変なところで察しがいい。
「………別に。元気だよ?」
ヘラッと笑って見せたところで、多分、こいつは…。
「いーや!今日、お昼全然食べてなかったし!授業中も先生に当てられてアタフタしてたし!」
信じてくれないんだよな。本当、面倒くさい奴。
「美味しいものでも食べに行く? あ!最近できたあの…駅前の…」
デジャヴだ。中学生の頃のあの頃と同じ。
美鈴の慰め方は、何年経っても変わらないらしい。
「………慰めてくれるの…?」
「ほら、やっぱり元気ないんじゃん! いいよ!なんでもするよ!」
彼氏持ちのくせに。『なんでもする』なんて言うなよ。
「………なんでもしてくれるの?」
「うん!」
あの日みたいに、夕焼けが綺麗な夕方。
俺だって、美鈴の色んなところを知ってるよ。
「鉄板焼き、また食べに行く? ケーキバイキングでもいいよ!」
猫舌で冷めないともんじゃ焼きが食べれないところも。
旬じゃない季節でもモンブラン頼んでてっぺんの栗は最後まで取っておくところも。
数学が苦手で国語が得意。
変なところで察しは良いくせに、自分のことになると鈍感。
一途で、真っ直ぐで、何処までも追い詰められても逃げないで立ち向かう。
芯が強くて、素直で、貪欲で……。
「…………俺だって…お前のこと、たくさん知ってるよ…。」
なんで俺じゃ無いんだろう。
幼い頃から素直に、真っ直ぐに、自分の気持ちを正直に伝えられていたら…。
今とは違う関係性で居られたんだろうか。
「なぁ…美鈴。」
「なに?」
こういう時に限って、都合の良い言葉が脳裏をすぎる。
『……このままでいいの?』
よくない。