集合30分前に目的地に着いた。

美鈴を待たせたくないし、なんとなく『こういう時は男の方が先にいるべき』なんてよくわからない固定概念のせいで早く到着してしまった。


「……ふぅ…」


賭けに勝ったら何をお願いしよう。

考えても特に何か浮かぶわけでもなく…。
だったら美鈴のお願いを叶えることにしたら良いんじゃないか?と思いついて提案したデート。


美鈴と2人で出掛けることは珍しいことでもないのに、『デート』という認識を持つだけで異常に緊張していた。


6月。程よい気温。梅雨前の清々しい気候。


現実逃避のように空を仰いでいると…。


「大ちゃん早いね!待った!?」


声が聞こえた方向を向けば、駆け寄ってくる美鈴を見つけた。


(いやいや、美鈴も早いな…)


「そんなに待ってないよ。」

「それならよかった…!」


息を呑んだ。

編み込まれた髪。
いつもよりも大人っぽい雰囲気。


「………」


おかしい。

尋常じゃないくらいに心臓はうるさいし、俺の顔見て嬉しそうにしてるのが堪らなく胸の奥が擽(くすぐ)ったい。


「凄い緊張して眠れなくて…私、ものすごく楽しみだった!」


美鈴は笑いながら俺の服の裾を掴む。今に始まったことじゃないボディタッチなのに、これ一つのことで神経が美鈴の方向へと引っ張られるから…。


(……かっこわる…。)


自分の筋の通せなさに内心嘲笑った。