気づけば閉会式も終わり、あっという間に夕方。
結局、優勝したのは赤組だった。
青組はなんとも言えない3位。
(つかれたー…)
トボトボゆっくり歩きながら帰り道を進んでいく。明日は確実に筋肉痛だろう。
「…………」
選抜リレーの大ちゃんは格好良かった。私の目の前を駆け抜けて、1人越したら次の人にバトンを繋ぐ姿は今でも鮮明に思い出せる。
脚光を浴びる姿は見ていて幼馴染として誇らしい。それだけじゃなくて、より深く大ちゃんという人間にハマってしまう。
「大ちゃんってすごいな…。」
「俺がいないところでも俺のこと褒めるんだな。」
背後から声が聞こえて、私の心音がバクバクとうるさく鳴る。
「っ! え!? 大ちゃん…!」
「そんなに驚かれると思わなかった。」
ふにゃっと解(ほぐ)れるような柔らかい笑顔。
つられて私も笑みが溢れる。
「ふふっ」
「どうした?」
「大ちゃんに会えたら疲れが全部吹っ飛ぶから不思議だなって」
「………」
告白して、一度は気まずくなった。
フラれたのに喰らい付いて、大ちゃんにとって迷惑かもしれない。
でも…。
「好きな人の力って凄いね。」
自己中心的な私は、想いを全面に出しても良いことに接しやすさを感じてしまう。
「……そういえば、大ちゃんの選抜リレーかっこよかった!」
「っ…なんか真正面から褒められると照れるんだけど…」
会話のネタは全て体育祭の内容。
1日中、会話ができない時間の寂しさを埋めるみたいに私は一つ一つの会話を噛み締めた。
「玉入れの時、美鈴のこと見つけたよ。頑張ってたな。」
「あれ、びっくりするほど入らないんだよね…。コツとかあるのかな…」
話せるだけで幸せ。片想いだとしても、好きな人のそばに居られる時間はかけがえのないものだし、心の底から嬉しいって思える。
「美鈴って意外と真面目だよな。」
「意外って失礼だな〜」
いつか振り向いてくれるのかな。
「じゃあ…思ったより…?」
「それもなんか嫌〜」
振り向いてくれると良いな…。
近くて遠い距離にいる幼馴染。
昔から憧れている人。頼りになる人。居て当たり前な人。これからもずっと一緒にいたい人。
………好きな人。
片思いをしている人。
「……美鈴」
名前を呼ばれるたびに胸は苦しい。
「なに?」
顔を見るたびに恋焦がれる。
そんな相手に…いつか……。
「体育祭の振替休日。一緒に出掛けよ。」
いつか、好きになってもらえるのかな。
「………赤組が優勝したら俺の願い、叶えてくれる約束だったよな?」
「それが…一緒に出掛けること…?」
「…………嫌か…?」
「嫌じゃない!」
頬が緩む。
嬉しすぎて子供みたいに、はしゃいでしまう。
そんな私を、大ちゃんは穏やかな表情で見ていた。