宝石みたいに光り輝く苺。
ミックスベリーは写真に映えるし、種類が豊富なショーケースは心躍る。
「甘い匂い〜…幸せ…」
ティラミスは確定。ショートケーキも食べたいし、チョコケーキも捨てがたい。
果物のタルトは色とりどりに照明を反射させ、私の食欲をそそった。
脳内でケーキ選抜総選挙なるものを開催してニヤけていると、隣で智樹はクスクスと笑う。
「悩みすぎっ…ふっははっ! バイキングなんだから全部取れば良いのに」
「だって晩御飯入らなくなっちゃうし…!」
「あー、そういうこと。じゃあ俺のと半分こしようか。」
「っ…珍しく気が効くじゃん!」
「失礼だな、おい。」
私が選び損ねたケーキを智樹は取っていく。綺麗に盛り付けて席へと戻ると、私の前に皿を差し出した。
「ほら、旬じゃない栗のモンブラン」
「『旬じゃない』とか一言余計!」
「はいはい。悪かったよ。ほら、食べな。」
「……ありがと…」
差し出されたモンブランをフォークでスポンジも含むように取る。そして口へと運び、頬張るとふんわりとした栗の芳香が鼻腔をくすぐった。
「っ…おいしぃ〜…」
頬が緩む。自然と上機嫌になり、私はご満悦な表情を智樹に向けていた。
「本当に好きなんだな。」
ふとした瞬間、本当にほんの少しの合間、智樹は微笑んだ。
「一緒に来て良かったよ。」
柔らかい声。雰囲気。面立ち。
相手は智樹なのに、見ていて思う。
大ちゃんみたい。
「………ぅわー…」
「どうした?」
『失恋』は『呪い』だ。
ずっと好きだったからこそ、その呪いは重たくて息苦しい。
「………私、忘れられるのかな…」
目の前にあるモンブランに視線を落とす。
『旬じゃないし、いつでも食べられるから』という理由で敢えて選抜から外したモンブラン。
いや、選んじゃいけないような気がしていたんだ。