部屋に着くと、お馴染みの大ちゃんの香りに酔いしれた。
気分がいい。
ベッドはさぞかしいい匂いがするんだろうなぁ。
変態くさい自分に呆れつつ、テレビの前へと移動する。
その時、私は目にした。
「………あ…」
机の上に並べられた参考書。たくさんの付箋(ふせん)の数。開かれたままのノートは赤字で要点がまとめられていた。普段しっかりしている大ちゃんを想起させないくらいに筆箱の中身は飛び散っていて…。
「………ごめん。勉強のこと考えてなかった。」
何が、『ゲームしよう』だ。
受験生という立場で学校でも生徒会長として頑張っていて…。
自己中心的な考えしかできない自分自身が未熟的だと思った。
「ごめん。」
「いやいや、たまには息抜きも必要だろ? 今更気を遣われたら逆に困るし。」
「私とゲームするの息抜きになる?」
「なる。」
「じゃあ、やる。」
毎度のことながら甘やかされて、私は笑顔になる。
申し訳ない気持ちと、嬉しさと。
天秤にかけたら圧倒的に後者が勝ってしまうのだ。