初恋は成就しない。
甘酸っぱくて、叶わないもの。
そんなの、誰が決めたんだろう。
「『ほんだみすず』って名前、ずんだ餅みてぇー!」
小1の時、高らかに笑う同級生は私のことを『ずんだ餅』と呼んでいた。本田の『んだ』と、美鈴の『ず』を引っ張ってきて『ずんだ餅』。
今なら多少はその発想に対して、『よくもまぁ、高度なあだ名をつけたもんだ』なんていう賞賛を送ってやらなくもない。
けれど、その頃の私は…。
「ずんだ餅じゃないもん…」
弱虫で、泣き虫だった私。強く言い返せるような性格は持ち合わせていなくて、震えた声で放った言葉は空気に溶けて消えていった。
「ずんだもちー!」
悲しさで溢れそうになる涙を必死に堪えていると…。
「俺は好きだよ、ずんだ餅。美味しいし、なんか音の響きも可愛いよな。」
大好きな2つ年上の幼馴染、『吉澤 大輝』こと『大ちゃん』が私といじめっ子の間に入ってそう言った。
気づけば、その時、その瞬間から。
私にとって大ちゃんは、王子様だ。