泰和総研は会議室への移動が無駄な時間と考えているため、朝会・会議、またチームブレインストーミングもオンラインでやっている。
「最後に皆が待ち望んでいたSWグループとのソフトウェア契約は決着がついた。こんな大きな契約はアジア全域において珍しいこと。それは皆のお陰で契約が出来た。しかし、これは海外への営業の序盤に過ぎない。これからは長い道程が皆を待っているけれど協力が大事。以上」彼女はさっさと朝会を終わらせた。
社員達はビデオ通話のグループから抜けていた。彼女のタブレット画面に秘書として勤務している、木崎絢香(きざきあやか)の通話しか残っていない、「社長。明日はSWアジア地域担当の副社長であるメアリ・トーマスさんが空港にご到着の予定です。明後日はSWグループの契約に続き、トーマスさんと共に記者会見の予定です」
「いよいよか」
彼女はいつもやりたい事が順風満帆に実現した時、逆にこんな良い事あるはずがない。まさか、相手に騙されていないよね、とネガティブに考えるのだ。やがて、運はいつも良過ぎる、これもまさに才能の一種なのでは、と急にポジティブな考えになるのもしばしばである。
ネガティブな考えとポジティブな考えを交互に脳内再生して、大きな契約を出来ても彼女は優越感を感じず、淡々と、坦々としている。優越感……いや、彼女の心が晴れる時は、きっとアイトミ総研を破産に追い詰めた時であろう。椅子に座っている彼女の手は無意識的デスクに置いてあるパソコンのマウスをいじくった。
「明日はメアリー・トーマスさんを迎えに行く時、くれぐれも失礼がないように」
「かしこまりました。社長、一件ご報告があります」
「どんな?」
「先日に頼まれましたエマ・ロビンソンさんの件ですが、お調べ致しました。SWグループの大株主であるロビンソンさんはハーバー大学卒業、フォーチュングローバル500の上位50である企業の上層部に勤めたことがあり、かなり手強い人である。得られる情報は以上しかないです 」
「分かった、ご苦労さま」
「失礼致します」絢香はビデオ通話のグループから抜けた。
古野愛が立ち上げた泰和総研はフォーチュングローバル500に入っていない会社。しかし、アイトミ総研は下記100に当たる会社であり、対抗するには強力なバックが必要である。彼女はアメリカ大手企業の大株主——エマ・ロビンソンをターゲットにして自分のバックにさせると決めた。
その時突然、廊下から八尾遥(やおはる)の声が彼女の耳に響く。
「琳田(りんだ)さん、社内恋愛禁止って事はあなた分かってるよな?谷崎琥太郎(たにざきこたろう)さんも分かってますよね?泰和総研はアメリカ企業と契約した。アメリカ企業はきっとこっちの企業は社内恋愛を望んでない。もし、今回契約した相手と長期に渡って協力ならより敏感になる、相手の反感を買うかもしれないですよ」
ところで、彼女はオフィス中からドアを開けた。
「八尾さん、ここは会社。あなたの家ではない、ボリュームを下げなさい。」
「社長!申し訳ございません……はい」
「琳田さん、谷崎さん。八尾さんの言った通り。社内恋愛したいなら、別の会社に就職した方が良い。今回は見なかった事にしたいが、また仕事中にくっついてるのを見かけたら、あなた達を別々の部署に異動させる。別に脅かしてる訳ではない」
「承知致しました……」
彼女はオフィスのドアを閉め、一面ガラスの窓の前まで歩き、外の景色を眺めていた。
東京の青藍の空に真っ白な入道雲が沸き立ち、大地は強い陽を浴びている。
「最後に皆が待ち望んでいたSWグループとのソフトウェア契約は決着がついた。こんな大きな契約はアジア全域において珍しいこと。それは皆のお陰で契約が出来た。しかし、これは海外への営業の序盤に過ぎない。これからは長い道程が皆を待っているけれど協力が大事。以上」彼女はさっさと朝会を終わらせた。
社員達はビデオ通話のグループから抜けていた。彼女のタブレット画面に秘書として勤務している、木崎絢香(きざきあやか)の通話しか残っていない、「社長。明日はSWアジア地域担当の副社長であるメアリ・トーマスさんが空港にご到着の予定です。明後日はSWグループの契約に続き、トーマスさんと共に記者会見の予定です」
「いよいよか」
彼女はいつもやりたい事が順風満帆に実現した時、逆にこんな良い事あるはずがない。まさか、相手に騙されていないよね、とネガティブに考えるのだ。やがて、運はいつも良過ぎる、これもまさに才能の一種なのでは、と急にポジティブな考えになるのもしばしばである。
ネガティブな考えとポジティブな考えを交互に脳内再生して、大きな契約を出来ても彼女は優越感を感じず、淡々と、坦々としている。優越感……いや、彼女の心が晴れる時は、きっとアイトミ総研を破産に追い詰めた時であろう。椅子に座っている彼女の手は無意識的デスクに置いてあるパソコンのマウスをいじくった。
「明日はメアリー・トーマスさんを迎えに行く時、くれぐれも失礼がないように」
「かしこまりました。社長、一件ご報告があります」
「どんな?」
「先日に頼まれましたエマ・ロビンソンさんの件ですが、お調べ致しました。SWグループの大株主であるロビンソンさんはハーバー大学卒業、フォーチュングローバル500の上位50である企業の上層部に勤めたことがあり、かなり手強い人である。得られる情報は以上しかないです 」
「分かった、ご苦労さま」
「失礼致します」絢香はビデオ通話のグループから抜けた。
古野愛が立ち上げた泰和総研はフォーチュングローバル500に入っていない会社。しかし、アイトミ総研は下記100に当たる会社であり、対抗するには強力なバックが必要である。彼女はアメリカ大手企業の大株主——エマ・ロビンソンをターゲットにして自分のバックにさせると決めた。
その時突然、廊下から八尾遥(やおはる)の声が彼女の耳に響く。
「琳田(りんだ)さん、社内恋愛禁止って事はあなた分かってるよな?谷崎琥太郎(たにざきこたろう)さんも分かってますよね?泰和総研はアメリカ企業と契約した。アメリカ企業はきっとこっちの企業は社内恋愛を望んでない。もし、今回契約した相手と長期に渡って協力ならより敏感になる、相手の反感を買うかもしれないですよ」
ところで、彼女はオフィス中からドアを開けた。
「八尾さん、ここは会社。あなたの家ではない、ボリュームを下げなさい。」
「社長!申し訳ございません……はい」
「琳田さん、谷崎さん。八尾さんの言った通り。社内恋愛したいなら、別の会社に就職した方が良い。今回は見なかった事にしたいが、また仕事中にくっついてるのを見かけたら、あなた達を別々の部署に異動させる。別に脅かしてる訳ではない」
「承知致しました……」
彼女はオフィスのドアを閉め、一面ガラスの窓の前まで歩き、外の景色を眺めていた。
東京の青藍の空に真っ白な入道雲が沸き立ち、大地は強い陽を浴びている。