お母さんには悪いけど食事に行きたい気分じゃない。
だけど行かないとお母さんにも、私自身にも悪い印象与えちゃうよね。
時計に目を移せばもう6時前。
約束は7時だから準備しなきゃ…そろそろお母さんも帰ってくる。
重たい体を起こして準備をしようとクローゼットを開ける。
何を着よう…スカート?パンツ?ワンピース?
いやワンピースはやめよう、これはお母さんが買ってきたものであって私好みのワンピースじゃない上に私が着ると子供っぽく見えてしまう。
パンツだとボーイッシュな感じで女の子っぽくない?というか高級レストランとは釣り合わないと思う。
ということはスカートしか残っていない。
クローゼットから幾つかスカートを引っ張り出す。
青のスカートに白のブラウスをスカートの中に入れて紐を襟に通してリボンを作る。
よし、私にしては珍しく可愛い系の服で決めてみた。
誰だって第一印象はよく見られたいからね。
着替え終えてナチュラルメイクをしてるとガチャッと玄関のドアが開く音がした、と同時に「ただいま~」とお母さんの声。
『お帰り』
「珍しい服着てるじゃん」
『いい印象も問うと思って』
「ちゃっかりしてる」
『お母さんの子だからね』
そりゃそうだと笑ったお母さんは仕事着からドレスアップ。
…いつもデート行くときの服よりお洒落で気合が入ってると思うのは気のせいだろうか?
いやいや気のせいじゃないよね、これは気合入ってるって。
気合十分の服に着替えたお母さんはメイク直しをしてウキウキした顔で行くよ!と言った。
そんなお母さんの一歩後ろを歩いて車に乗り込んでホテルへと向かう。
ただの食事会なのに、手が汗ばんでしまうほど緊張してしまってる。
正一さんってどんな人なんだろう?
息子さんってどんな人なんだろう?
ていうか食事代は!?お母さん出すの!?
てか出せれる額なの?!
絶対高い!私が想像してる値段より高いことは分かってる!