絶対彼氏だって察しているよね?



いやいや、何この人…ていうかチラリと誠人を見てみれば眉間に皺が寄り瞳はちょーっとばかり怒りが含まれてる。




これは非常にマズいんだけど。




誠人のこの怒りを受けるの、多分私なんだけど。



目の前の残念イケメン誘いを断るも「そいつ男友達だろ?」「さすがにデートじゃねぇよな」と何やら誠人の位置づけを勝手に決めちゃってる残念イケメン。



さすがにイライラが募ってきた私は「彼氏とデート中なので」とはっきり言ってやってすぐさまその場を後にした。



怒りメーターがMAXになった私は競歩並に歩きあっという間にマンションに着いてしまった。



そして誠人はバイクをマンションの駐車場に置いているため地下駐車場へ。




『全く!何なのよあの男____』




駐車場に着くや否や誠人は瞬間的に私の唇を奪った。

相変わらずキスはすっごい上手いんだよね。
すぐに白旗を挙げそうになるほど。




『…っはぁ…はぁ…』




貪るように私の唇を奪っていた誠人はようやく放してくれたのだけど私は腰が砕ける寸前。


本当堪ったもんじゃない。



「足りねぇの?」



物欲しそうな顔をしてしまっていたのか、誠人はそう言って私の顔をリンゴのように赤くさせた。


正直、足りないと言えば足りない…。

もっと触れたい。


『ねぇ誠人』




もっとキスしたいよ。
だけど、それ以上に…



『私と、キス以上のことをするのは嫌…?』

「は?」



突然私の口から出た言葉にプチパニックを起こさす誠人。



『触れたくないの…?』

「おい沙夜どうし__」

『ごめん』



自分から訊いたくせに、その答えを聞きたくない。


『今日さ、お母さんの恋人と食事会なんだよね』


だから話を逸らす。


『もう緊張しちゃって』


私の…悪い癖だ。


『だから…もう行くね』

「……」


何も言わない誠人に“またね”と“さよなら”を告げて私はマンションの中へと入っていった。


ブロロ…とバイクの音がして帰ったんだと分かる。


部屋に入ると思いきりベッドにダイブした。
仰向けになって天井を眺めて溜め息を零す。


……何か気分じゃない。