「でも無事でよかった」

『…うん』




短くて…長いような沈黙が続いた。

20秒?5分?どれだけ経ったか分からない。



本当は1分程度かもしれない、だけど1時間は経ってしまったような感覚に陥った。

この沈黙を破ったのは彼の方だった。




「話してくれてありがとな」




ありがとう、それを言うのは私の方なのに優しく彼が言った。



話してよかったのかもしれない…心にあったモヤが少し、ほんの少しだけどとれたような気がしたから。


『私の方こそありがとう…』


気を落ち着けるために少し覚めてしまったコーヒーを飲んだ。


『…ぁ』


カチカチと動く時計に目をやると、6時半を過ぎていて夕飯を作らないといけないことに気付いた。


お母さんは今日も帰ってくるのが遅いので私が作らないといけないのだ。



誠人の隣から離れてキッチンに入ると何を作ろうかと考えて、頭を悩ました。


何を作ろう。




「夕飯作んの?じゃあ俺帰るな。コーヒーありがとな」




そう言って帰ろうとした誠人を止めて「食べてけば?」と言うと「いや、いい」と断られた。



なんと、せっかく彼女が作ってあげるというのにそれを断るというの。


そんな誠人を睨み「食べてけ」とオクターブ低い声で言うと「あ、うん」と承諾した。



何を作ろうかと再び悩んでいた私は誠人に何が食べたいのかを訊くと可愛いことに「ずげぇ美味いハンバーグ」と少し目を輝かせて言った。



ハンバーグが好物なのだと分かった瞬間だった。



ご希望通りハンバーグを作り始めて1時間弱______とびっきり美味しい沙夜特性ハンバーグを完成させた。