そのとき、何で私に近づいたのか、声を掛けたのか分からなかった。



だから私は何が目的か分からなかったからあまり喋ろうとしなかった。



だけど名倉は毎日私に話し掛けた。



最初は「うん」「そう」とか素っ気ない返事しかしなかったものの、次第に話せるようになっていき、周りからは仲のいい2人、付き合ってるんじゃないのかとまで言われた。



そんなある日、名倉に「好きなんだ。俺たち付き合わない?」と思いもよらないことを言われ固まってしまった。



付き合ってるとかくだらない噂はあったけど、私たち2人の間にそんな雰囲気とかなかったのに突然のことで驚いた。



「いつから好きだったの?」とその疑問ばかり。



私は好きだった、けどそれは恋愛の好きじゃなくて…でも名倉は「付き合ってみよう」と言ってきた。



別に嫌と言う訳でもなかった私は「いいよ」と言あっさり承諾をしてしまった。


それからしばらくして…私は付き合ってしまったことを酷く後悔する。



付き合って一週間後、放課後の帰り道触れるだけのキスをされた。



ファーストキスだったけど嫌じゃなかった。



それから意識し始めて付き合って3週間が経ったとき気づけば〝好き〟になっていた。



ラブラブだったし、ずっとこのままだと思っていた___けどそれは突如終わりを告げる。



体育の授業でシューズを忘れたことに気づき、教室に取りに向かう途中の階段で話し声が聞こえて思わず足を止めた。



それはよく知る名倉の声だったから。

誰か友人と話している様子だった。



「で、どうなんだよ?」



と問う友人。



「あぁ、今は俺のこと好きらしい」



名倉はそう答える。

胸騒ぎがする。

すごく嫌な予感がした。



「今回もお前の勝ちかよ」

「でも思った以上に時間かかった」

「時間かかってたな~」



ケラケラと友人は笑っている。

勝ちって何…どういうこと…。