終業後。

 私は三浦部長と会社の最寄り駅から二つ先の駅の傍にある映画館に行った。

 半年前に出来たばかりの映画館はまだ新しくリクライニングの機能のついた座席の座り心地も良かった。館内の広さはそれほどでもないが、観客の数も少ないためあまり狭苦しさは感じない。

 上映された映画はいわゆる恋愛ものだった。

 恋人同士ならきっといい雰囲気になれただろう。

 しかし、私と三浦部長はただの上司と部下である。いい雰囲気もへったくれもない。

 映画に対して素敵だなとは思うが隣にいる三浦部長に特別な感情を抱いたりとかはしなかった。

 薄暗い中で三浦部長がそわそわし始める。

 どうしたのかと半分意識を向けていると彼の手がこちらへ伸びてきた。