そうそうと言いつつ三浦部長がスーツの内ポケットに手を入れた。

「実は知り合いから映画のチケットをもらってね」

 クリーム色の封筒を取り出して彼は続けた。

「ペアチケットなんだが残念なことに僕は独り身だ。君、悪いが付き合ってくれないか?」

 ぞわり、と悪寒が走った。

 全力で断ろうと口を開きかけたとき彼が付け加える。

「あ、年末に君がやらかしたミスなら気にしなくていいから。別にそれをネタに強要しようとかそんなつもりはないよ」
「……」

 えーと。

 それ、「ミスったんだから言うこと聞けよ」とも聞こえるんですけど。

 というかやっぱり強要だよね?

 わぁ、とんでもない上司。

 最低。