それに気づくのはそのすぐ後だった。

ある日、雛乃が友達と遊ぶと外に出かけていた時のこと。


「ただいまー」


いつも通り家に帰ると、知らない女性用の靴がひとつそこにあった。

来客かな……女性みたいだけど。


俺は不思議に思ったけども、リビングに踏み込んだのだった。




──全てはそこからだった。



「もう高2なんだね……迅を本当にありがとう」

「いいのよ。仕事は落ち着いた?」

「うん、新しい職場で慣れないけど給料が前より増えてね。迅の将来のためのお金も貯まってきたの」

「そういうのは大丈夫なのに……でも、迅のやりたいことをやらせたいわね」

「……わたしのわがままで産まれちゃった子だから、最大限の幸せをあげたくて」


リビングに入ろうとドアノブを握る手を止めた。


知らない女性が『自分のわがままで俺を産んだ』って……どういうことだ?


息が止まる。

何も考えられなくなる。