わたしだっているから……ううん、皆がついてるから。
わたしは息を吸って、吐いて。
お兄ちゃんの腕を封じ込めていた手を彼の胸へと移動した。
これがきっと、最後の魔法だ。
「ベニア・エドナデアティビ」
──苦しんでいたお兄ちゃんへの贈り物。
「……雛乃っ、ごめん……」
「……っ」
彼の手から離れた包丁が床に刺されたのを眺める。
これで全てが終わったんだと喜びを噛み締めて、わたしはお兄ちゃんを正面から抱きしめた。
「……俺」
「うん……頑張ったね……」
「……うわあああああああああ」
お兄ちゃんは虚な顔をして、事態を呑み込んだ後、今までの感情が溢れ出すかのように泣き叫んだのだった。
꙳✧
˖°
⌖