「ヒナノ様。お願いがあります」
茶髪さんはこちらが悲しくなるほど、心苦しい表情で訴えた。
「我が国王を……ジン様を救って欲しいのです」
「ジン様……?」
ジンと言われて、思いつく人はただひとり。
「──ヒナノ様の兄であるジン様を助けて欲しいのです」
「お兄ちゃん……?」
高柳 迅。
わたしのお兄ちゃんの名前だ。
お兄ちゃんはとても優しくて、頭が良くて、かっこよくて……大好きで。
トラオムに来たのもお兄ちゃんを追いかけたからだ。
まさかお兄ちゃんがトラオムの国王だったなんて……。
だがその驚きも、戸惑いも全て。
続いた言葉の衝撃で書き消えてしまう。
「ジン殿下は今から“本当の父上”を殺めに帰られました」