夢から醒めない。
暗闇の中でひたすら落下を続けるわたし。
消えてしまった温もりがとても切なくて。
数秒前までは確かにあったのに。
「──ヒナノ様!」
悲しみの泥沼に浸っていると、わたしを呼ぶ声がした。
アランでもユラハでもユキでもない知らない人の声。
でも姿を見たら、誰かわかってしまった。
あの時……建国記念パーティーで出会った仮面の男性、茶髪さんだ。
あの時とは違い、騎士団服に仮面をつけて、わたしのところへと進んでくる。
「あの時の……!」
「ご無事で何よりです」
「あの……ここはどこかわかりますか……?」
「あと少しで元の世界に戻るでしょう。そしてトラオムは壊れて無くなります」
元の世界ということはわたしは夢から醒める……ということ?