あと少しだけでいいから、今はまだ……

──ユキを奪わないで。


「ユキっ!」


地面が割れる。

わたし達は奥深い暗闇へと落ちていく。


落下したままわたしは(くう)を掴んだ。


何度も、何度も。


そしてわずかな願いが叶って、もう一度手を伸ばせばユキと手を繋ぐことができた。


片方が繋がれたら、もう片方も容易にできる。

わたしとユキは両手を絡ませて、お互いを見つめた。


「ユキ……ユキ!」

「ん?」


こんな状況なのに微笑んだユキに胸が苦しくなって


「好き」


──想いが溢れた。


「俺……」


ユキも何かを紡ごうと口にするが、わたしが瞬きを一度すれば……


そこにもうユキはいなくなっていた。



「ユキっ!!」


この続きをもう聞くことはなかった。




꙳✧

˖°