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話は数時間前に遡る。
「あー、分からない!」
わたし──高柳雛乃は明日までの課題で頭を悩ませていた。
高校生活が始まって早くも1年と半月が過ぎ、意味もなく1日を過ごす日々を繰り返している。
英語は比較的得意な方なんだけどな。だが単語の意味がわからない。
辞書で調べようと立ち上がったが、学校に置き忘れたことを思い出す。
あー、なんてタイミングの悪いこと。
なんて溜め息を吐いたが、わたしはすぐにあることをひらめいた。
「よし、お兄ちゃんに借りよう!」
わたしのお兄ちゃんは現役で国立大学に見事合格して、現在大学生活に慣れようと努力しているところだ。
大学1年生なのでわたしとは2つ歳が離れている。
お兄ちゃんの通う学部は特に英語に力を入れているみたいで、お兄ちゃんも一生懸命英語の勉強をしている。
お兄ちゃんなら英和辞書を持っているに違いない……!
そしてお兄ちゃんが忙しくなさそうだったら教えてもらおう!
そう思ったわたしは、早速お兄ちゃんの部屋へと向かった。