気付いた時には彼は剣を鞘にしまっていた。
倒れたドラゴンを見て、この男性が勝ったのだと……強いのだということだけわかった。
チラッとわたしと目が合ったが、彼は何も声をかけず背を向けて歩き出した。
「……あの!」
先程のショックで腰が抜けてしまい、上手く立ち上がれない。
せめて彼に届くように精一杯声を張り上げた。
歩いてた足を止めて、ゆっくりとわたしを見る。
「……!」
「なんだ? 何か用でもあるのか?」
「いえ! えっと、あの……ありがとうございました!」
び、びっくりした……。
男性は彫刻みたいに綺麗なお顔だったから。
黒のサラサラな髪に赤い瞳。
ミステリアスで涼しい顔をしときながら、どこか情熱があるように感じる。
これまで生きてきた中で、これほど惹きつけられるのは初めてだった。