よし、もう一回やろう……!
目を閉じて深呼吸をして、カッと瞳を開いて全力で集中する。
「アンフェンガーリン!」
しかし、結果は変わらなかった。
こんな都合よく簡単にできるわけないもんね。
せっかくユキもついているのに、早速挫けそうだ。
「ヒナノちゃん、頑張ってる?」
「ユラハ! 聞いてよ〜! 全然できない!」
「まあ、子どもの方が身につきやすいっていうし、今学ぼうとするとかえって大変かもね」
ふと芳ばしくて甘い匂いが鼻につく。
匂いの元を辿ると、苦笑いしているユラハの手元にアップルパイがあることに気づく。
「アップルパイ……!」
「うん、煮詰まるのも集中力切れちゃうだろうから、休憩しようよ」
「うんうん! ユキも一緒に食べよー!」
ユキはこくんと頷き、すたすたとユラハの家に入っていった。