「水瀬の名前なんかじゃなく、お前の営業で契約が取れるはずだ」

…そう。
だって、そのためにこの半年尽くしてきたんだから。

「もっと頼れよ。同期なんだから。手伝うから、資料集めでも書類作りでも何でも」

真っ直ぐにこちらを見つめる瞳はキラキラ輝いていて、泥の中に沈んでいたような私の心がゆっくりと浮上していく。

どうしてだろう。
どうして水瀬はいつも私の欲しい言葉がわかるんだろう。

私自身も自覚していないのに、どうして的確に当てて与えてくれるんだろう。


担当を降りたくない。
でもそんなことただの我儘で自己満足なんじゃないかって思ってた。

庇ってくれたのは嬉しかった。
でもそこに『水瀬』の冠が付いた時点で私の実力ではなくなってしまったのがやるせなかった。

でもこんなこと誰にも言えなかった。

営業課はみんないい人だけど男性ばかり。女性社員は営業事務の人が何人かいるだけで、営業に出る女性は私だけ。