「あなたのことが好きです。俺で良かったら、付き合ってください。」



私は小さい頃から人の笑い声が苦手だった。

私の両親は私が3歳の頃に離婚して母が女手1つで私を育ててくれていた。

母は私を育てるために必要なお金を夜の仕事で稼いでいた。

私が寝てから家を出て、私が起きる頃には帰ってきて眠っている。

母はお昼頃起きてきて一緒に昼食を食べる。

私の夕飯はいつも母が机の上に置いていく野口さんが食べさせてくれていた。


母は昔から情緒が読めない人だったが私に暴力を振るうことはなかった。

小学3年生までは。

私が小学4年生にあがると学校で着ていた体育着がかなりきつくなった。

もとから1着しかもっておらず毎日着ていたからだろう、他の人よりもだいぶ汚れていた。

流石に新しいものが欲しいと母に頼むことにした私は朝、早く起きて母が帰ってくるのを待った。

お酒の匂いをプンプンさせて帰宅する母に水と薬を用意して。

「今日のお客さんさー、田辺さんっていうんだけど金めっちゃ持ってんだよねえ」

「お母さん頑張ってきちゃう。あんたのために。いってきます!」

昨晩私を起こしてまでこんな話をしたのだ。

上機嫌で帰ってくるはず。

玄関でガチャっという音がした。

私は玄関まで走っていって母に飛びつこうとした。

「お母さんっ!おかえりなさい」

母は一瞬驚いた顔をしてその後「チッ」という舌打ちが聞こえた。

「…んだよ起きてたのかよ。なに?」

「あ…薬とお水用意してあるから、明日はお休みだし…」

母があんなにもうんざりしている顔を初めて見た。

何かいけないことをしてしまっただろうか。

母と視線を合わせられずにキラキラした服で強調されている胸をただ見つめていた。

その時上から声がした。

「なあ、なんかあったのか?」

母の優しい声だ。

思わず顔を見上げて

「4年間今の体育着を使ってきたから、そろそろ新しいのが欲しいなって思っ…」

言っている途中で私のお腹を激しい痛みが襲った。

母に蹴り飛ばされた。

今まで暴力は振るわれたことがなかったのに。

突然のことで頭が真っ白になった。


ここから、私と母の関係は変わっていった。