死の神も、死神も同じだろう……と言う気にもならない。
 
こんな真夜中になんの冗談だ。俺は特別興味もなく、雑にたずねた。

「で、死の神がなんの用?」
 
胸元には、ネームバッチのようなものがついていた。

白地のプレートに、金色で108と数字が刻まれている。
 
かろうじて見える口元から淡々と放たれたのは、背筋が凍るような言葉。

「倉木莉緒は、あと38日後に死亡する」

俺は目を見開いた。
 
莉緒が、死ぬ……?

「今日は、その下見だ」

「……ふざけたこと言ってんじゃねえよっ!」
 
俺はたまらず声を荒げた。静かな夜の廊下に、自分の声が響く。
 
冗談でもそんなこと言わせねえ。気づけば、俺は男の胸ぐらを掴んでいた。
 
顔を近づければ、ブルーの瞳が一瞬目に入った。
 
顔は青白く、俺が投げ飛ばせば一発で吹き飛びそうなほど体はほっそりしている。