そう。血も涙もない、極悪非道な悪魔。
 
目の前の男は鎌こそもっていないが、死神というのは、誰もがそういう認識のはずだ。

「おいおい、その言い方は聞き捨てならないな。こっちは、魂をしかるべきところまで運んでやっているんだ。死の神の存在がなければ、魂はこの世をさまよい続けて成仏できない。むやみやたらに魂を取っているわけではない。これでも寿命を迎えた者に敬意を表し、成仏できるようにと願いながら、大事に魂を運んでいる」

男は、誇らしげに言った。
 
俺が知るところの死神なんて、魂を吸い取る悪い奴というイメージしかない。

魂を持って行ってもらうなんて概念はなかった。

「感謝されても、悪態をつかれる覚えはない。そんなんだと、お前の時には誰も担当したがらないぞ」

「俺のときって……」