「ん? 透瑠くん、それ何?」

「いや……なんでもないです」



透瑠くんがなにやらメモを見開いた目で見ていたので、皮を剥きながら尋ねてみた。

しかし、そのまま手のひらでくしゃっと丸められてしまった。



「さ、急いで準備しましょう」



慌てた様子でメモをゴミ箱に捨てた透瑠くん。

……怪しい。


ゴミ箱をこっそり開け、くしゃくしゃになったメモを取り出す。



【♡とおるへ♡
清花ちゃんとホワイトデー楽しんでね♡
ちゃんとおもてなしするんだぞ♡】



なにこれ。おもてなし⁉

丸っこい字面からすると……これは透瑠ママの字⁉


目を丸くしたままチラリと隣に視線を向けると、絶望的な表情を浮かべた透瑠くんと目が合った。



「ごめんなさい……隠し通せませんでした……」

「嘘でしょ⁉ 今日友達の家に遊びに行くって言ったのに……」



よりによって母親にバレたなんて……。

めっちゃハートついてるし、この感じからすると、絶対お母さんに伝わるよな。

あーあ、今日は赤飯確定だ……。



「ちょっと嬉しさを抑えきれませんでした」

「そんなニヤニヤしながら言われても……」



バレたくなかった理由は、親が私達以上にノリノリで、あれこれ突っ込んでくるから。