お日様の匂いのする我が子を抱き上げて、いつものようにギューッと抱きしめる。

抱きつぶしたくなるほどに愛おしい。

「ママも起きてるぞ?」
抱き上げたままベッドに移動すると、妻が体を起こそうとしていた。

「光、おはようは?」
「ママ!」
妻に向かって手を伸ばす息子をベッドに座らせて、俺は妻が体を起こすのを手伝う。

妻は息子を胸に抱きしめる。

俺と同じようにありったけの力を込めて。

『おはよう』
妻の声を息子は動画でしか聞いたことがない。
その声で名前を呼ぶことはない。
きっと誰よりも、息子の名前を呼びたいのも、息子と話をしたいのも、妻のはずだ。
でも、妻はもう悲観をしていない。