その放課後……


委員の仕事があるから、紗奈ちゃんには先に帰ってもらった。


私もそろそろ帰らないと……


そう思って、鞄を手に持って教室を出た。


階段があるところまで行くと、渡り廊下の方に……


「萌、キスしていい?」


「もちろん、いいに決まってるよ」


湊君と萌ちゃんがいた。


そして、2人の唇が重なる。


それを見て、金縛りにあったかのように動けなくなった。


そして、胸も苦しくなる。


……何で、こんな場面を見てしまったんだろう。


私って、運がないな。


ポロッ


気がついたら泣いていて。


それでも、足は動かない。


何で、見てるの?


こんなシーン見ても辛くなるだけなのに……


集中していた私は、近寄ってきた気配に気づかなかった。


「君、泣いてるの?」


誰……?


振り向くと、男の人がいた。


ネクタイの色が青色だから、3年生。


先輩だ……


すごくイケメンで、スタイルもいい。


見た目は染めていない綺麗な黒髪で真面目そうだけど、この人は……


「佐野佑都、先輩……」