「じゃあ、もう行くね」


「あぁ」


「あ、一ノ瀬さん行くんだ。またね!」


これ以上、この2人を見ていられない。


辛いだけ。


私は教室に行った。


ガラガラ


扉を開けると……


「あ、ふゆ!おはよう!」


「おはよう、紗奈ちゃん」


元気いっぱいの挨拶。


その声の主は、柳樂紗奈ちゃん。


美人な紗奈ちゃんは、私の親友なの。


「あれ?なんか、元気ないね。どうかした?」


「え、あ。ちょっと、ね」


「あ、もしかして檜山君関係?」


言葉を濁した私に、すぐ言い当てた。


……紗奈ちゃん、鋭い。


「うん。中村さんを紹介されてね。仲良い2人を見て、やっぱり辛くなっちゃった」


紗奈ちゃんだけは知ってるんだ。


私の想いを。


「もう、檜山君はデリカシーないんだから!そんなことしたら、ふゆが傷つくのは分かってるのに!」


「湊君は私の想いを知らないから、無理ないよ」


「えー、本当に気づいてないの?ふゆって結構分かりやすいし、ふゆが知らないだけで本当は気づいてるんじゃないの?」


私って、そんなに分かりやすいの……?