「君は有名だからね。僕があの男のことを忘れさせてあげるよ」
にっこり笑って、顔が近づいた。
チュッ
リップ音をさせて、唇ギリギリのところにキスをしてきた。
「……っ!?」
「ふっ、可愛い顔」
「や、やめてください。それと、これ以上関わらないでください。もう帰ります」
佐野先輩に背を向けて、走って帰った。
何なの、あの先輩は……
触ってみると、頬が熱い。
慣れていないせいだ。
先輩があんなことを急にやるから……
湊君にだって、されたことないのに……
そう思ったら、急に悲しくなった。
その後、私はあまり眠れなかった。
ふわー、寝不足だよ。
本当に眠い。
「ふゆ、おはよう!って、何で机に突っ伏してるの?」
「紗奈ちゃん、おはよう。ちょっと寝不足で」
「寝不足?何があったの?」
心配そうな顔で聞いてきた紗奈ちゃんに正直に話そうと思った。
「あのね……」
昨日起きた出来事を包み隠さず全て話した。