「あ、僕のこと知ってるんだ?嬉しいな」


佐野佑都先輩……


あまりいい噂は聞かない。


女の子と付き合っては別れてを繰り返していて、彼女さんがいても平気で浮気をしたりするんだとか。


今も多分、彼女さんがいるんだろう。


でも、芸能人並のルックスだからすごくモテる。


「何で泣いてたの?」


「……大丈夫です。気にせず行ってください」


「うーん。僕、女の子の涙を見たらほっとけないんだよね」


言ってることがチャラい。


噂は本当っぽいね。


佐野先輩は渡り廊下の方を見て、納得したような顔になった。


「なるほど。君、あの男のことが好きなんだ?」


気づかれた……


私、本当に分かりやすいのかも。


「そうです……」


もう、認めてしまうしかない。


「へー、片想いなんだ?でも、叶わないと思うよ。あの男は、あそこにいる女の子が好きみたいだから」


……嫌な先輩。


そんなこと嫌ってほど分かってるのに……


「知ってます。ほっといてください」


「僕にそんな態度をとる女の子は初めてだよ。ねぇ、君。一ノ瀬ふゆちゃん」


驚いて目を見開いた。


私の名前を知ってるんだ……