絡まった視線。

わたしをとらえて離さなかった漆黒の瞳が、少し見ない間に揺れていた。


ねぇ、廉。

泣きそうだよ?



「ずっと、小さい頃から、優しくしてくれるいっくんが好きだった。いじわるな廉から守ってくれるいっくんが好きだった」

「…………」

「高校生になってもそれは変わんなくて、いっくんだけで、いっくんに好きな人がいるって気づいたときは絶望した」

「…………」


廉はなにも答えないけど、わたしの話をしっかり聞いてくれている。

頬を撫でる手が優しい。



「それでも諦めきれなくて、いっくんに好きになってもらおうとたくさんがんばった。がんばってたよね?」

「……ん」


語尾を少し上げれば短く返事をしてくれる。



「でもね、いつからか廉の顔ばかり浮かぶようになってた」

「…………」

「わたしが廉にいちばん近くて、なんでも知ってるのが当たり前って思ってた。でも、廉のことがわかんなくなってモヤモヤして……」

「…………」