わたしはずっとドキドキして、恥ずかしくて爆発しそうだったのに、廉はいつも通り。
いまも、わたしばっかりだ。
おとなしく廉に髪を乾かしてもらう。
廉が髪を乾かしてくれるなんて変な感じ。
そういうこと、しないと思っていたのに。
わたしが知らない廉はたくさんいるんだ。
最近、そのことを知るたびに胸がチクリと痛む。
「……ん、できた」
「ありがと」
「やっぱ、こっちのほうがいい」
廉がわたしの髪を指の隙間に入れる。
髪の毛に神経が通っているかのように、そこから熱が伝わっていく。
ねぇ、やっぱりなんか……くすぐったいよ。
変な感じ。
「できたよ。簡単なものだけど」
お母さんに声をかけられて、ハッとする。
振り返れば、テーブルにサラダとふわふわたまごのオムライスが置いてあった。
「食べましょうか」
お母さんの手招きで、立ち上がり廉に支えてもらいながら移動する。
こんな短い距離でも支えるなんて、ほんと心配性すぎるよね。