体育祭終わりだからか、普段の学校と少し違う。

ざわざわしたような雰囲気の中、廉と歩く廊下はやっぱりくすぐったかった。


靴を履き替えて、再び廉が腕を出すからつかまる。



「廉は疲れてないの?」

「疲れたよ」

「早く帰りたいだろうに、わたしに付き合ってゆっくり歩くなんて」

「なに?」

「優しいとこあるねって思っただけ」

「俺、いつも優しいだろ。昔からずっと優しいよ」

「は?」


廉のセリフに思わずガチトーンで返す。

だって『いつも優しい』ってそれは違うでしょ。


いや、気づいてるよ。
だれよりも優しいって。

でも、廉の優しさはわかりにくい。


話すときもそうだけど、受け手が読み取らなきゃ気づけない。


それに、わたしには昔からいじわるばかりだったし。



「なんだよ」

「もっとわかりやすくしてよ。優しいとしてもそれ以上にいじわる多い」

「…………る」

「なに?」

「……胡桃が望むなら、いくらでも優しくできる」