逃げる場所?どこへ?そんなの知ったもんか。
容姿が違うだけなのに。普通の人間なのに。
何度もそう言い聞かせた。言い伝えを鵜呑みにし過ぎなのだ。
村から逃げてからは、ひたすら生きるのに必死だった。
路地裏で汚い生活を送る毎日。
人から汚い目で見られようが、私は生きているのだから。
――自販機の下を覗き込み、何かないか確認する。
愚かな人達は、お金を落としていく。前に千円が落ちて居た時はラッキーだった。
「言葉が分かれば、多少は何とかなるかもしれない」と思った私は、必死にかき集めて、辞書を買った。
当時の私からしたら、辞書にはまだ知らぬ言葉がとても魅力的に感じたから、素敵な物だったのだろう。
…でも、何かが足りない。何かはわからない。正体不明に何かが私の心の中でモヤモヤしている。