「袋の中にちょうどいいサイズの花瓶も入ってます」
「本当? すっごく助かる」
 続いて、小さな袋からは包装紙とリボンでラッピングされた箱が出てきた。
「こちらもみんなからなんですけど、開けてみてください」
「うん、ありがとう」
 箱は片手で持てるくらいの大きさで、軽い。
 いったん花束をまりこに預け、丁寧に包装を解く。箱に見知ったロゴが現れたとき、私はその中身を悟った。
「これっ……ロンネフェルトの茶葉!」
 ロンネフェルトといえば、紅茶好きなら誰もが知る最高級ブランドだ。最高級なだけあってお値段が張るため、ホテルなどで飲んだことはあっても茶葉の購入に至ったことはない。
「愛華さん、いつもいい香りのする美味しい紅茶を飲んでいましたよね。素敵なティータイムを過ごしてほしいと思ってこれにしました」
「憧れてたけど、自分じゃなかなか買えなかったの。本当に嬉しい。みなさん、ありがとうございます」
 箱の中には四種類の茶葉が詰め合わせられている。明日からしばらく、毎日ホテルラウンジ気分を味わえそうだ。
 とっておきのティーセットで楽しもう。
 みんなのことを思いながら。
 頂いたプレゼントを紙袋に戻したところで、進行役の広瀬が進める。
「それでは、本当に最後になりますが、沼田さんからひと言お願いします」
 いよいよこの時が来てしまった。
 自分の送別会の開催が決まってから、なにを話そうかずっと考えていた。考えてはいたけれど、まとまらないまま今を迎えている。
 思ったままを話そう。
 私は一度深く息を吸って、吐いて、みんなの顔を見渡した。

 みなさん、本日はお忙しい中、私のためにお集まりいただいてありがとうございます。
 そしてこのような素敵な会を開いてくださって、ありがとうございます。
 こんなにたくさんの方が来てくださったので、正直なところ、驚きました。
 会の間、おひとりおひとりとお話させていただきましたけれど、みなさんに温かい言葉をかけていただき、感謝と幸福で胸がいっぱいです。