「佐藤さん」

「例の彼じゃなくて残念って顔してる」

「してませんよ」

「してた。でも安心して、彼来てるから」

「え」


あの人、今日も来てるんだ。


「しかも林檎ちゃんを探してるっぽいよ」

「私を?」

「早く行ってあげな。でも長くならないようにね」


とグイグイ背中を押す佐藤さんのせいで私の視界に入ってしまった。
例の彼がきょろきょろ辺りを見渡す姿が。


高身長というだけでも目立つのに、それに加えて綺麗な黒髪に顔が整ったメガネ男子。人の目を集めないわけがない。

そんな彼に近づくと、私を見つけてはパァッと効果音がつきそうなくらいの顔をした。


「釘宮さん」

「一昨日ぶりですね、黒崎さん」

「読みましたよ。あの本」

「もう読んだんですか?」


彼はつい一昨日もこの店に来ていた。

その時に私がオススメした本を購入したのだけど、もう読んだらしくその感想を話してくれた。