「けど、女は泣かしてますね」
「分かってるじゃないですか」
「それでも、選ぶのは釘宮さんですけど」
そうだ、もしもそうであった場合の話だけれど、最終的に選ぶのは私だ。
でもやっぱり、黒崎さんが私に気があるなんて確率はゼロに等しいと思うんだけど。
「あ…」
こんなことに頭を悩ませている暇なんてないんだった。
「それじゃあ、私先に帰りますね。お疲れ様です」
さっさと帰って小説の続きを読まなくちゃいけない。今日中には読み切りたいんだから。
私は2人にそう告げると、逃げるようにバイト先を離れた。
「ただいま」
「おかえり林檎」
「お腹空いた」
「ご飯食べてお風呂入っちゃいなさい」
「うん」
家に着いたのは22時半すぎ。
お腹は当然空いていて、お風呂にも早く入ってさっぱりしたい。