「5万円賭けててもいい」


本気の顔でとんでもないこと言いだしてしまった。


「賭けないでください。それに金額がリアルすぎます」


それに一体誰と賭けるっていうんですか。


「朴さんもそう思わない?」

「…まぁ、そうですね」


佐藤さんが声を掛けた先には、超がつくほど影の薄い日本語が流暢な韓国人の朴さんがいた。


「あ、朴さんお疲れ様です」

「お疲れ様です」


彼女は26歳で仕事が出来て頼れる人ではあるんだけど、影が薄い上に影を消すのが上手いから最初の頃は心臓が何度口から飛び出しそうになったことか。


「私も気がある方に5万賭けます」

「ちょ…朴さんまで」


だからと言って暗いというわけでもなく、意外とノリが良かったりする。


「彼、良い人だと思いますよ」


朴さん、私だって黒崎さんがいい人だとは思ってますよ。
でも、あの顔で遊んでこなかったわけがないじゃないですか。これは私の偏見ですけど。