「ごめんなさい……」


自分の服の胸元をぎゅっと握り、何度も何度もあやまった。

健吾がこんなに本気で怒るなんて、信じられなかった。

あたしに向けられる健吾の瞳は、いつだってとびきり優しかったから。
 

怖くて
ショックで

でも健吾の言う通りで。


あたしは親に捨てられまいとする子どものように、あやまり続けた。


「本当にごめんなさい」


何度目かわからないその言葉のあと、健吾は低くつぶやいた。


「乗れよ」

「え?」


聞き返したけれど、目を合わしてはくれない。
 

でも

乗れと言った。
言ってくれた。


それだけであたしは泣きたいくらい安堵がこみ上げ、こくりと深くうなずいて健吾のバイクの後ろに乗った。
 


到着したのは、健吾のマンション。


てっきりすぐにあたしの家まで送り届けられると思っていたのに

こっちに連れてきてくれた……。


それは健吾があたしを許してくれた証だと、思っていいんだよね?