あたしは健吾の背中から腕を回し、しがみついた。


「莉子、離せ」

「嫌!」

「離せ!」
 

ふり払おうとした健吾の手があたしの左肩に当たる。

ケガしている場所に激痛が走り、あたしは顔を歪めた。


「痛っ」
 
思わず声をもらすと、健吾は我に返ったように動きを止めた。

瞳から怒りがすぅっと消え、罪悪感がにじんでいく。
 

重苦しい沈黙のまましばらく経ち、ズキズキした疼きが治まったころ。

健吾はあたしの頭の後ろに手を当て、優しく抱きよせた。


「……ごめん」

「ううん、平気」
 

あたしは健吾の胸に顔を当てたまま、そうつぶやいた。
 

健吾が正気に戻ってくれるなら、ちょっと痛い思いをするくらい全然かまわない。


左肩の痛みより、健吾が止まってくれた安堵の方がずっと大きいんだ。