ゆっくりと近づいてくる健吾の顔。

何をしようとしているのか
奥手なあたしでもわかる。

心臓が急速に鳴り始め、ぎゅっと目をつむった。
 

初めてのキスが自分の家の前だなんて、ムードに欠ける気もするけど

健吾とならそんなの関係ないよ。

あたしのファーストキスは健吾じゃなきゃ嫌だから。
 

あたしは息もせずに、目を閉じたまま健吾の口づけを待った。


そして健吾の唇が、あたしの唇に……


「ん?」


なかなか来ないので不思議に思って目を開けると

健吾の顔はあたしから20センチほど離れたところにあった。


「あの、健吾……」

「それもあのときのケガか?」
 

あたしの膝の絆創膏を見て、健吾が言った。

またその話なの? と少々あきれた気持ちで、あたしは答える。


「違うよ。これは駐車場で襲われたとき――」
 

ハッとあたしは口をつぐんだ。

あの夜のことを健吾は知らないのに、うっかり口を滑らせるなんて。
 

ごまかす言葉を探してオロオロするあたしに、健吾は怖い顔で詰め寄ってくる。