思いつめた顔の健吾に、あたしはすかさず言い返す。


「ううん、あたしが勝手に間に入ったせいだもん。
でももう健吾にはああいうことはしてほしくない。
健吾が危険な目に合うのは絶対に嫌なの。
あたし、あのときケガをしたのが自分でよかったって思ってるよ」
 

それは本心から出た言葉だった。

あたしは、健吾がケガをするなんて耐えられない。

たとえそれがスリ傷ひとつでも。

たとえそれが100%相手に非があるケンカで、しかたなくても。
 

あたしにとっては自分の痛みより、健吾の痛みの方がずっとダメージが大きいんだ。


「うん……悪かったよ」
 

そうつぶやいた健吾の表情から、棘がとれた。
 
あたしはやっと安心して、健吾を見上げながら微笑んだ。


「今日はいっぱいあやまってるね、健吾」

「あぁ。この俺にここまであやまらせるなんて、やっぱりお前はすげぇな」
 

あたしたちは顔を見合わせ、笑った。

なんだか少しだけ、また距離が近づいた気がした。
 

しばらく笑っていたかと思うと、健吾は突然黙りこみ、あたしをじっと見つめてきた。


「え……何?」

尋ねても返事はない。


健吾の瞳は真剣で、そしてまっすぐで

あたしは体が動かなくなった。