「だせぇよなあ、俺。親の世話になんかなってないつもりだったのに。
まあ一応、金は自分で払ってたけどな」
 

さばけた口調の中に、自嘲するような響きが混じったのを、あたしは聞き逃さなかった。
 


健吾……

本当はすごく悔しいんだよね? 


いつも親に頼らず独りで頑張っているのに、結局はまだ子どもだという現実を突きつけられて

悔しくて仕方ないんだよね? 
 


強い部分しか知らなかった健吾の、弱さを少しだけ垣間見た気がしていると

健吾はふっと表情をこわばらせた。


「お前、もしかしてこれって」
 

健吾が“これ”と言ったのは、あたしのシャツの袖からはみ出た湿布だった。


例の金髪男にふり飛ばされたとき、棚にぶつけてしまった左肩だ。


「あ、うん。でも軽い打ち身だし、もうほとんど痛まないよ」
 

明るい口調でそう答えたけれど、健吾の表情がほぐれることはなかった。


「悪かった……マジで」