「………」


嬉しすぎると、言葉って出なくなるものなんだ。

あたしは心の昂りを抑えながら、夕陽に照らされた健吾の顔を見つめた。
 

健吾はあたしに気づいて立ち上がると、どことなく気まずそうな笑顔で「よう」と言った。


「久しぶりだな。元気だったか?」

「……バカ」

「バカはねぇだろ」

「バカだよ! あたしがどれだけ心配したと思ってんの? 
連絡のひとつくらい、くれてもいいじゃん」
 

やっと声が出せたと思ったら、真っ先に出たのはこんな言葉。

数日分の不安がいっきに溶けて、雪崩のように抑えられなくて。


「悪かったよ」
 

健吾はあたしの手首をつかみ、自分の方に引き寄せた。


目の前に健吾の胸元がきて、その近さにドキッとした。


「親父に携帯止められたんだ。うかつだった。親の名義だってこと忘れてた」
 

言葉の端々で、健吾は乾いた笑いをもらす。