「あのっ、あたしが止めてきます!」


そう叫んで部屋を飛び出そうとしたけれど、間に合わなかった。

つかみかけたドアノブが外側から回され、あたしの意思とは関係なく、ドアが開いた。


「健吾……」
 

冷や汗が背中を流れていく。


うろたえるあたしを怪訝そうに見ていた健吾の視線は、すぐに男たちに移った。


「誰だ、お前ら」

「思い出せねぇのか?」
 

金髪男が聞き返した。

健吾はまったく動じることなく、面倒くさそうな顔で見下ろしたままだ。


「いちいち顔なんか覚えてねぇし」

「ついこないだも駐車場で会っただろ」

「最近、物忘れがひどくてなぁ」
 

ぽりぽりと頭を掻いて答える健吾を、男は怪しく見据え、そして言った。


「北高3年……って聞いても、とぼけるか?」


その瞬間、健吾の眉間がピクッと動いた。

さっきまで余裕のあった瞳に、怒りの色がみるみる表れる。


「お前ら、莉子に何かしてねぇだろうな」
 

え……? 

あたしは驚いて健吾の顔を凝視した。
 

どうして、そこであたしの名前が出るの? 

昨夜のことは知らないはずなのに、どうして。