「んー? あんたら、何だぁ?」


唯一平静なシンさんが、軽くあしらうように尋ねると


「俺ら、駄菓子を買いに来ただけだけど悪いっすか?」

 
男のひとりが白々しく答え、まわりの男たちがゲラゲラと下品な笑い声をあげた。


「あっそう。じゃ、うまい棒買ってやるから早く帰りな」
 

子どもをからかうような口調でシンさんが言った瞬間、男たちの表情が険しくなった。


金髪の男がアルミ製の灰皿をつかみ、シンさんに投げつけた。

灰皿は素早くよけたシンさんの顔の横をすり抜け、後ろのドアに勢いよく当たった。
 
真由ちゃんの悲鳴と、金属が床で跳ねる音が重なる。

飛び散った灰が、粉雪のようにゆっくり落ちていった。


「……あっぶねぇな~。男前の俺の顔を台無しにする気かよ」
 

シンさんはフーッと大きく息を吐き、ふり返る。


「ミツル」

「はっ、はい!」

「とりあえずお前は、莉子ちゃんと真由ちゃんを連れて避難」

「はい」

「あと、健吾が来ないように止めといて」


その言葉を聞いて、ハッとするあたし。
 

そうだった、今ここで健吾が来たら、騒ぎはもっと大きくなってしまうんだ。