その夜は家に帰っても眠れず、最悪の状態で翌朝を迎えた。


「アキさん、今日は来ないのかなぁ。始業式早々さぼるとか、さすがだよね~」
 

何も知らない真由ちゃんが、あたしの隣の空席を見て言う。
 

日焼けしたクラスメイトたちが挨拶を交わす教室。

今日から学校は2学期だ。


「アキのことだから、夏休みが終わったこと忘れてるんじゃない?」


あたしがそう言ってごまかすと


「うんうん、アキさんならありえる~。
学校来てもサボってばっかりだし、体育なんか受けてるとこすら見たことないし」
 

と、真由ちゃんは気にする様子もなく笑った。
 

あたしは内心、アキが来ていないことに少しホッとしていた。

だって、昨日殴られたところが腫れていたりしたら、みんなが詮索するだろうから。
 

あのことは絶対に、健吾の耳には入れたくないんだ……。
 



午前中で学校が終わり、お昼は健吾たちと近くのファミレスで食べた。


店内には同じ高校の子たちが何組かいて、みんなが憧れのまなざしで健吾を見ている。
 

ドリアを何度もフーフーして食べる猫舌のあたしを

「ガキだな、お前」

と笑う健吾。


そんなあたしたちを

「莉子と健吾さん、ラブラブ見せつけすぎ!
ただでさえも注目浴びてんのに」

と冷やかすミツル。