言われてやっと、あたしは自分の体が異常なくらいガタガタ震えていることに気づいた。

歯の根がかみ合わず、心臓がバクバクで、今にも嘔吐しそうなほどだ。
 

そのとき、アキの腕がこちらに伸びてきたかと思うと、ふっと体を前に引き寄せられた。


「……アキ?」
 

あたしを包み込む、温かい胸。

アキの心臓の音もすごかった。
 

それとは裏腹に静かな声が、頭の上で響く。


「大丈夫。もし見つかったら、俺があいつら引きつけといてやるから」

「……なんで、そこまでして守ってくれるの?」

「別にあんたを守ってるわけじゃねーし」
 

アキの声に、いつもの涼しい笑いが混じった。


「あんたが健吾の女だからだ」
 

背中にまわされた腕に、ぐっと力がこもる。


健吾より少し細い腕、薄い胸板。

華奢なその体であたしを助けてくれたアキ。
 


だけどあたしの中にこみ上げる不安は、拭おうとしても拭いきることができなかった。


悪夢のようなさっきの光景が、はっきりとまぶたに焼き付いて――